あでぃおす、浮浪者。
今朝方、寝ようとした時、やっっっっっと、寝れそうになった時(賢者タイム中)、
うちの扉をコンコン、とノックしやがる奴が来た。
扉を開けると、浮浪者だった。
…
浮浪者と言っても、元々知り合いの…
いや、この言い方だと、語弊があるな。
まあいーや、とにかく、そこにいたのは、訳あって浮浪者になってしまった友達だった。
以下、その友達と、この度の登場人物の、人間としての尊厳を守るために、記名をイニシャル、Nガシマと、Iシカワ、とする。
Nガシマは、よくわからない布を纏い、所持金は0円、スマホも無けりゃ、財布と思しきものも持たず、身分を証明するものさえ、一切合切何にも無く、そこに佇んでいた。
…
迷惑だ。笑
なんだコイツは。笑
朝から迷惑が来た。笑
一体何なんだ、全く。
ちなみにNガシマは、昨日の夜、公衆電話で俺のスマホに電話をしてきて、俺と会話をしていたらしい。
俺は、眠剤のおかげで、その事を一切覚えていなかった。
今朝方、非通知の着信履歴を不思議に思っていた俺は、理由がわかって一安心だった。
…
いやいやいや!一安心だった、じゃない。
全然、大丈夫、じゃねーよ。
ふざけんな。笑
ちなみにIシカワ。
お前が教えたらしいな、俺のスマホの電話番号。
Iシカワ、ふざけんな。笑
俺に浮浪者をパスして来るな。
俺も在宅浮浪者みたいなもんだ。
人助け出来る余裕なんかねーよバカ野郎!
っていうか人の電話番号を友達とは言え勝手に教えてんじゃねーよ!お前俺のツイッターもラインもブロックしてるくせに何してんだよ!最低限のマナーとして、せめて俺に一報入れてから教えろよこのバカ川ぼけカス!お前ほんまそういうとこやぞ!お前のそういう軽率で浅はかな所とかが理由で結局バンドのドラムをク…
おっと、言い過ぎたぜ、Iシカワ。すまん。
話を戻そう。
とにかく、俺は、朝から大変だったのだ。
俺はとりあえずNガシマを家にあげた。
あいにくうちも貧乏で、米と水しか無かったので、微々たるそれらを、色々な話をしながら一緒に分け合って朝食を済ませた。
貧乏だけど、会話に華が咲き、明るく楽しい、陽気な朝食だった。
てか托鉢みたいだなぁ〜、と、今思った。
それから俺とNガシマは散歩に出かけた。
まさか在宅浮浪者と浮浪者が、談笑しながら散歩しているなんていう青空ではない程、青空で、いい天気だった。
談笑の詳細は伏せるが、どうやらNガシマは、人生とやらに迷っている様子だった。
そこで俺は、Nガシマに3つの提案をしてみた。
①どうにかして実家に帰る。
②このまま東京で浮浪者を続ける。
③他県の別のNガシマの知人の家まで、9時間かけて、徒歩で浮浪する。
3つの提案をしたが、俺的にはもちろん、
答えは一択だった。
ちなみにNガシマは俺より年上の方だ。
もしNガシマが提案①を選んでいなかったら、即刻その場で殺処分していたかもしれない。
この3つの提案は、それくらい一択だった。
あいにく、いや、幸い、Nガシマは提案①を選択してくれた。
俺は人を殺めずに済んだ。良かった。
それから俺は、Nガシマの実家に電話をかけ、彼の母様に、彼が実家へと帰るための渡航費の工面を段取りして頂いた。
物腰の柔らかい、綺麗な口調の、素敵な方だった。母親とは、大変なものだなぁ、と思った。
なんでこんなにも素敵な方から、Nガシマの様なこんな変てこりんのちんちくりんの浮浪者が産まれてくるのか、不思議に思った。
母は強し。
段取りはスムーズに進んだ。
そのあと、駅までNガシマに付き添って歩いた。
途中、俺たちの思い出の神社に立ち寄って、おみくじを引いた。
俺は大吉だった。
Nガシマは、末吉だった。
Iシカワは、きっと大凶だろう。
そう願っておいた。
頼むぜ神さま。大凶大凶大凶…っと。
冗談だ。
本当はNガシマも、Iシカワも、幸せになって欲しいと本気で思っている。
神様、どうか宜しくお願い致します。
せめて知り合いは、みんな幸せにしてやって下さい。
いつかまた三人で、あの時みたいに笑いながらお参り出来たらいいな。くそったれ。
P.S.
Nガシマ、とりあえず無事に帰ってくれ。
そして心配だから、帰ったら絶対に一報よこせ。
あとIシカワ、色々、いい加減にしなさい。
おわり。